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韓国の会社で働く人や、韓国法人で現地スタッフを雇う日本の担当者にとって、退職金(퇴직금)は避けて通れない話題です。日本では退職金を出すかどうかは会社の制度しだいですが、韓国では法律で支払いが義務づけられています。X(旧Twitter)でも在韓の投稿者が、アルバイトでも1年以上勤務すれば退職金が支給される一方、雇う側の負担は相当重いと紹介していました。
この記事では、韓国の雇用労働部のよくある質問と相談回答、法制処の生活法令情報、KOTRAの投資ガイドをもとに、だれが対象になるのか、いくらになるのか、いつどこで受け取るのかを順番に整理しました。数字や条文は2026年10月時点で各ページに載っている内容です。個別の事情がある場合は、管轄の労働官署や専門家に確認してください。
韓国の退職金はだれがもらえる?2つの条件
韓国の退職金は「勤労者退職給付保障法」(근로자퇴직급여 보장법)で定められた制度です。雇用労働部のよくある質問によると、同法8条1項で、使用者は継続勤労期間1年につき30日分以上の平均賃金を退職金として支給する制度を設けなければならないとされています。まずは、この義務がどんな働き方に当てはまるのかを確認します。
1年以上・週15時間以上が条件、試用期間や育児休職も含めて数える
雇用労働部の迅速インターネット相談では、週12.5時間のアルバイトに退職金が必要かという質問に対し、同法4条と8条の条件を示して回答していました。対象は、4週間を平均した1週間の所定労働時間が15時間以上で、かつ1年以上継続して働いた人です。4週平均で週15時間に届かない人には、退職金は発生しないと説明されています。
ここでいう「所定労働時間」は、法定の基準労働時間の範囲内で労使が決めた労働時間のことで、実際に働いた時間とは違うと回答は注意していました。残業で結果的に長く働いた週があっても、契約上の時間が週15時間未満なら対象外になるということです。質問者のように1日2.5時間・週12.5時間の契約であれば、退職金の支払い義務は生じないと考えられる、というのが相談回答の結論でした。
継続勤労期間の数え方で気になるのが、試用期間や休職の期間です。試用期間も雇用関係が続いている期間なので、継続勤労期間に含めて数えます。また、育児休職の期間は勤続期間に算入することが「男女雇用平等と仕事・家庭両立支援に関する法律」第19条第4項で定められています。入社して最初の数か月が試用期間だった人や、途中で育児休職を取った人も、その期間を除いて1年に足りないと考える必要はありません。
同じ回答は、退職金制度は労働契約の形態や雇用契約期間の反復とは関係なく、継続勤労年数が1年以上になれば支払うものだと述べています。正社員か契約社員か、アルバイトかで区別されないのが大きな特徴です。雇用労働部のよくある質問でも、継続勤労年数とは労働契約を結んで雇われた日から退職するまでの全体の期間を指すと説明していました。
反対に、継続勤労期間は1年以上でなければならないので、1日でも足りない場合は使用者に支払い義務が生じないとも書かれています。364日で辞めるのか、1年を過ぎてから辞めるのかで結果が大きく変わるため、退職日を決めるときは勤続日数を正確に数えておくことが大切です。採用する側も、入社日と退職日の記録を残しておけば、後で計算の根拠を示しやすくなります。
退職金の計算式と「平均賃金」の出し方
対象になることが分かったら、次は金額です。雇用労働部と、その顧客相談センター(1350)のよくある質問には、同じ計算式が載っていました。基本の式は単純ですが、基準になる「平均賃金」の出し方にいくつか決まりがあります。
平均賃金×30日×継続勤労日数÷365、1年を超えた分も日割り
計算式は「退職金=1日の平均賃金×30日分×継続勤労日数÷365」です。平均賃金は勤労基準法2条にもとづき、退職など算定事由が発生した日以前の3か月間に支払われた賃金総額を、その3か月の総日数で割った金額とされています。ここでの日数は営業日ではなく暦の日数で、別の相談回答も、退職日以前3か月の暦月上の日数で割ると説明していました。
もう一つのルールが、通常賃金との比較です。この方法で出した平均賃金がその人の通常賃金より少なければ、通常賃金の額を平均賃金として使います。ある相談回答では、通常賃金の基準日は退職日だと補足していました。1350のよくある質問は、雇用労働部のサイトにある模擬計算の結果は参考にとどまり、会社の内規などによって実際の支給額とは違いが出ることがあると断っています。計算機の数字は目安として使い、最終的な額は給与明細と就業規則で確かめましょう。
1年5か月24日働いたのに、社長から「退職金は1年分で切る」と言われたという相談もありました。雇用労働部の回答は、退職金は「平均賃金×30×総勤労期間÷365」で計算すると示しています。式に入るのは継続勤労日数そのものなので、1年を超えた端数の期間も日割りで反映されるということです。回答には、退職日から14日以内に支払われない場合は、事業場の所在地を管轄する雇用労働支庁に陳情を出せるとも書かれていました。
平均賃金の3か月に特別な期間が含まれる場合の扱いも、法制処の生活法令情報にまとめられています。見習い開始から3か月以内の期間、使用者の責任による休業、産前産後休業、業務上のけがや病気の療養、育児休業、争議行為の期間、兵役による休職、承認を得た私傷病の休業などは、期間とその間の賃金を算定から除くとされていました。休職が3か月を超えて算定期間がなくなる場合は、休職1日目を算定事由の発生日とみなして、その前の3か月で計算するとのことです。また、育児期の労働時間短縮制度を利用した人については、短縮していた期間を平均賃金の算定期間から除くと定められています(男女雇用平等と仕事・家庭両立支援に関する法律19条の3第4項)。時短勤務で給料が下がった時期が直前にあっても、そのぶん退職金が減らないようにする仕組みです。
支払いの期限と受け取り方
金額が決まっても、いつまでに、どこへ支払われるのかを知らなければ手続きで迷います。韓国では支払いの期限が短く、受け取る口座にも決まりがあります。日本の感覚で待っていると、思わぬところで食い違いが起きるかもしれません。
退職から14日以内に支払い、受け取りは原則IRP口座
雇用労働部のよくある質問によると、使用者は勤労者退職給付保障法9条にもとづき、支払事由が発生した日から14日以内に退職金を支払わなければなりません。特別な事情があれば、当事者間の合意で支払期日を延ばすこともできるとされています。KOTRAのInvestKOREAも、労働者が死亡または退職した場合は、14日以内に賃金や補償金などの金品を清算しなければならないと案内していました。
退職金を請求する権利には時効があります。同じよくある質問によれば、退職金債権の消滅時効は退職した日の翌日から数え、同法10条により3年間行使しなければ時効で消えるとのことです。InvestKOREAはまた、使用者は退職した労働者から求められれば、使用期間や業務の種類、地位、賃金などを記した使用証明書をすぐに交付しなければならないとも説明していました。転職先への提出や後日の確認に備えて、退職時に受け取っておくと安心です。なお、退職金とは別に未払いの給料がある場合、賃金債権の時効は勤労基準法49条により、定期の支払日から数えて3年と案内されていました。
法制処の生活法令情報によると、退職金は労働者が指定した個人型退職年金制度(IRP)の口座などに移す方法で支払わなければならないと定められています(同法9条2項)。StockStepの解説は、2022年4月14日から退職給付は原則としてIRP口座で受け取る形になったと紹介していました。現金で手元に振り込まれると思っていると、口座の準備が間に合わないこともあり得ます。
例外として生活法令情報が挙げているのは、55歳以降に退職して受け取る場合、給付が雇用労働部長官の告示する金額以下の場合、労働者が死亡した場合、他の法令で給付の全部または一部が控除される場合などです。日本人にとって大切なのは、就職活動ができる在留資格で韓国内で働いて退職した外国人が、退職後に国外へ出国した場合も例外に含まれている点でしょう。帰国が決まっている人は、受け取り方法を会社と早めに相談しておくと手続きがスムーズです。
IRPに移したお金をどうするかで、税金の扱いも変わります。StockStepの解説では、すぐに引き出すと退職所得税を差し引いて受け取り、IRPに置いておけば課税を繰り延べられるとしていました。満55歳以降に年金として受け取ると、年金受領限度額の範囲内で退職所得税が30%減り、受給11年目からは40%、2026年からは21年目以降50%減るとのことです。税率や控除の細かな条件は変わることがあるため、実際に受け取る前に金融機関や税務の窓口で確かめるのが確実でしょう。
退職年金と中間精算、月給込みの約束に注意
会社によっては、退職金の代わりに退職年金制度を導入しています。また、在職中に前倒しで受け取る中間精算や、月給に退職金を含めるという約束をめぐる問題もあります。最後に、制度の違いと注意したいケースを見ておきましょう。
DB型・DC型・IRPの違いと、中間精算の扱い
InvestKOREAの説明では、退職給付制度には、使用者が継続勤労1年につき30日分以上の平均賃金を一時金で支払う退職金制度と、財源を社外の金融機関に積み立てる退職年金制度があります。退職年金には確定給付型(DB)、確定拠出型(DC)、個人型(IRP)があり、DBは退職金と同じく30日分の平均賃金に勤続年数を掛けた額で、受け取る水準があらかじめ決まっています。DCは、使用者が毎年加入者の年間賃金総額の12分の1以上を年金口座に払い込む仕組みです。
InvestKOREAは、退職年金に加入すれば労働者は退職給付が未払いになる心配が減り、使用者は払い込んだ分が法人税法上の損金として認められると説明していました。StockStepの比較によると、DBは退職直前3か月の平均賃金が基準なので賃金が上がり続ける人に有利で、DCは運用の損益を本人が負うため、賃金が今後上がらない人や転職が多い人に向くとされています。同サイトは、一度DCに変えるとDBに戻すのは難しいとも注意していました。
StockStepによると、在職中に退職金を前もって受け取る中間精算は、法律で定めた事由があり、会社が認めた場合に限られます。挙げられていたのは、無住宅者が本人名義で住宅を買う場合、居住目的でチョンセ金や保証金を負担する場合(同じ会社で1回)、本人や家族の6か月以上の療養で医療費が年間賃金総額の12.5%を超える場合、5年以内の破産宣告や個人再生、賃金ピーク制や労働時間短縮による賃金減少などです。中間精算を受けると、その時点までの勤続期間が精算され、後で受け取る退職金はその分減ります。
よく問題になるのが「月給に退職金を含めて払う」という約束です。法制処の生活法令情報は、大法院2010年5月20日の全員合議体判決(2007다90760)を紹介し、月給や日給と一緒に退職金としてあらかじめ一定額を払う約定は強行法規に反して無効で、労働者は受け取った退職金名目の金額を不当利得として返さなければならないと説明していました。2012年12月13日の判決(2012다77006)は、賃金と区別できる形で労働者に不利にならない場合に限って認める余地を示しています。2012年の判決が認めるのは、退職金を含めて払い退職時にほかの退職金は払わないという合意があり、退職金名目の金額が特定でき、その契約が以前の契約や勤労基準法に照らして労働者に不利益でない場合とされていました。退職金を払わずに済ませるために形だけ分割払いにした約定には当てはまらない、とも説明されています。契約書にこうした条項があるときは、内容をよく確かめることが欠かせません。
まとめ:韓国の退職金で押さえたい5つのルール
韓国の退職金は、法律で決まった条件と計算式があり、日本の会社ごとの退職金制度とは考え方が大きく違います。働く側も雇う側も、次の5つを押さえておくと話がかみ合いやすくなります。
- 4週平均で週15時間以上の所定労働時間があり、1年以上続けて働けば、契約の形に関係なく対象になる
- 金額は1日の平均賃金×30日×継続勤労日数÷365で、平均賃金は直前3か月の賃金総額を暦日数で割る
- 平均賃金が通常賃金より低ければ通常賃金を使い、育児休業などの期間は算定から除く
- 支払いは退職から14日以内で、原則はIRP口座への移転、請求できる期間は3年
- 退職年金や中間精算には別のルールがあり、月給に退職金を含める約定は原則として無効
退職金のトラブルは、勤続日数の数え方や平均賃金の範囲といった細かな点から起こりがちです。迷ったときは雇用労働部の相談窓口(1350)や管轄の労働官署に、契約書と給与明細を手元に置いて問い合わせてみてください。別の相談回答によれば、陳情は管轄の地方雇用労働庁を訪ねて申し立てるほか、インターネットでも受け付けています。